現存する国内唯一の蘭(らん)学塾遺構であり、史跡・重要文化財に指定されている「適塾」(大阪市中央区北浜3、TEL 06-6231-1970)で9月15日から、特別展示「西洋の知と適塾」が開催される。
適塾は、江戸後期の蘭学者で医者の緒方洪庵が開いた私塾で、福沢諭吉や大村益次郎など日本の近代化をけん引した多くの人材を輩出したことで知られる。後に設立された医学校が変遷を重ね、現在の大阪大学へと発展した。
特別展示は一般公開が始まった1980年(昭和55年)より毎年開催。今回は「オランダの学問を日本人がどのようにして自分たちのものにしてきたかを感じてもらいたい」と、16世紀末期から20世紀初頭にかかる時代を、「西洋の知の導入」「緒方洪庵と西洋の知」「適塾生と西洋の知」の3つに分け、「西洋新旧度量比較表」や「歩兵操典」などの書物や資料を32点出品する。
一番の見どころは、日本で蘭学を大きく発展させる契機となった杉田玄白・前野良沢らの「解体新書」と、その原本となる「ターヘル・アナトミア」。いずれも当時刊行された現物を公開する。
江戸時代の貴重な町屋建築としても有名な同塾。耐震改修工事を終え再オープンした2014年5月以降、先月末までに2万6205人の来館者があったという。同塾に設置された感想ノートには、大阪観光のついでに立ち寄る人のほか、医師・看護師などの医療従事者が洪庵の足跡を尋ねて来館した際のコメントも。
大阪大学適塾記念センター准教授の松永和浩さんは、「江戸時代の洋学者は西洋の知識を渇望した。そこには『知』が有する社会的有用性への確信があり、事実、近代化に貢献した。研究・教育関係者はもちろん、現代社会を生きる人々にそのことを再認識してもらえれば」と来館を呼び掛ける。
開館時間は10時~16時。入場料は、一般=260円、大学生・高校生=140円、小学生・中学生は無料。今月27日まで(24日は休館)。