大阪・備後町の綿業会館(大阪市中央区備後町2)で4月16日、「渋沢栄一と大阪~関西企業とのかかわりを中心に~」と題したシンポジウムが開催された。主催は東洋紡(北区)と渋沢栄一記念財団(東京都北区)。
渋沢栄一は江戸期の武士で実業家。幕府や明治政府に仕えた後、東京証券取引所や銀行、鉄道会社など、さまざまな分野にわたり500以上の企業設立・経営に関わった。明治時代には五代友厚、松本重太郎ら大阪の財界人とも協力し、大阪と東京でバランスのとれた日本経済の発展にも尽力したとされる。
シンポジウムは、現在の東洋紡の基盤となった大阪紡績や京阪電気鉄道など、関西企業の設立・経営への渋沢栄一の関わりに注目し、現代に与える影響や意味を考えるという趣旨で開かれる。
定員200人のところ、参加希望が相次いだため50席追加したが満席となった。当日は、東洋紡や京阪電鉄の関係者や企業人、研究者、学生などが参加。司会は、大阪大学名誉教授で大阪企業家ミュージアム館長の宮本又郎さん。パネリストとして、東洋紡相談役で日本綿業倶楽部理事会長の津村準二さん、京阪電鉄最高顧問で大阪商工会議所会頭の佐藤茂雄さん、国士舘大学政経学部教授の阿部武司さん、跡見学園女子大学副学長で観光コミュニティ学部教授の老川慶喜さんらが登壇した。
津村さんと佐藤さんは、東洋紡や京阪電鉄の企業理念に渋沢栄一の経営哲学が生き続けていることを話し、阿部さんと老川さんは、繊維産業や鉄道会社との関わりについて説明した。
同財団の加藤さんは「明治時代の日本や大阪の近代産業の発展の一端を一緒に振り返る機会になったのでは。東京を拠点としていた渋沢栄一だが、関西地方の皆さまにも知ってもらえれば」と話す。
近隣に住む60代の男性参加者は「渋沢栄一のことは著書を読んで知っていたが、このシンポジウムに参加して、その偉大さがさらによく分かった。彼の考え方は現在にこそ必要と感じた」と熱っぽく語った。