プレスリリース

大阪市立自然史博物館 第56回特別展「学芸員のおしごと ー集める・調べる・伝えるー」を開催します

リリース発行企業:地方独立行政法人大阪市博物館機構

情報提供:


[1]チラシビジュアル

 博物館では「学芸員」と呼ばれる人たちが働いています。学芸員は博物館で来館者が見学する展示の企画・作製だけでなく、標本の収集・管理や標本等を用いた研究を行っています。とはいえ、博物館を支えている学芸員が具体的にどのような仕事を行っているのかはあまり知られていません。
 この特別展では、博物館が取り扱う「標本」に着目し、学芸員が標本をどのように収集・管理し、研究を行い、社会に伝えているかを紹介します。展示を通して学芸員のお仕事を知ることで、博物館により興味を持ってもらえることを期待しています。
 また、毎年博物館の本館で開催している「ジュニア自由研究・標本ギャラリー」を同特別展の会場内で同時開催します。

I.開催概要


II.展示構成と主な展示

1.はじめに:学芸員のおしごと
 博物館で働く「学芸員」とはどんな仕事をしているのか。その概要を紹介します。
2.まずは「集めよう」
 博物館学芸員の重要な仕事の一つに、「標本の収集」があります。「標本」とは何か、標本収集の意義とは何か、どのようなものを、どのようにして集めるのかを紹介します。

【主な展示】
・昆虫、植物、魚、哺乳類、無脊椎動物、化石、岩石など様々な種類の標本【写真2・3・4・5】



[2] チョウの仲間の乾燥標本
チョウをはじめとした昆虫標本は、標本を作製する際に昆虫針を用いて羽や足の形を整えて、乾燥させて標本にします。





[3] ケンサキイカの液浸標本
そのまま乾燥させて保存するのが難しい生き物は、エタノールなどの薬品に浸けて保存します。これを液浸標本といいます。保存液に浸ける前に、ホルマリンなどの薬品でタンパク質を変性させ、形態の保存性をよくする処理をすることもあります。写真は大阪湾産のケンサキイカの液浸標本です。





[4] 地学標本(アンモナイト化石)
化石の標本は、化石の周りについている砂や泥などを削り取ることで(この作業をクリーニングといいます)、化石の本体だけをきれいに取り出して標本にします。写真は和泉山脈に分布する和泉層群から見つかったアンモナイト化石、ネオフィロセラス・ヘトナイエンゼ(Neophylloceras hetonaiense)です。





[5] 地学標本(岩石・和泉層群の礫岩)
岩石は表面の構造などが見やすいように成形して標本にします。



・乾燥標本、液浸標本など、対象によって変わる標本の保管方法
・分野によって異なる標本収集のための採集調査道具
・図書や図鑑およびその原図、過去の文献資料など、実物標本以外の博物館で収集を行っているもの【写真6】


[6] 堀勝氏の蔵書
自然史博物館では、標本以外にも、図鑑、報告書、自然科学系の学術雑誌なども収集しています。博物館での研究や教育活動には、学術雑誌や図鑑が必須です。また、図鑑・論文の原図には、様々な情報が残されていることもあり、博物館ではこれらの保存にも努めています。写真は当館の前身である大阪市立自然科学博物館の学芸員だった堀勝氏の蔵書です。戦前の貴重な図鑑類を多く含むほか、堀氏が監修、執筆した自然科学の教育普及書も含みます。関西の各地の植物目録等も多く含まれていますが、発行部数も少なく当館でも所蔵していないものが多く含まれます。



3.新しく博物館に来た標本
 博物館には学芸員によって収集された標本に加え、プロ・アマチュア問わず研究者や市民等から寄贈を受け、コレクションとして加わった標本が多くあります。主に2022年以降に当館で収集・寄贈された標本を展示し、その標本の意義と博物館での資料収集活動について紹介します。

【主な展示】
・2021年に大阪湾に漂着したニタリクジラの骨格標本【写真7】


[7] ニタリクジラの頭骨
浅い大阪湾にも、大型クジラがしばしば迷い込んできます。自然史博物館ではできるかぎりその標本化を行っています。標本にすることで、クジラの研究が行われ、その保護に活かす上で貴重な情報が得られます。写真は2021年(令和3年)7月に、死体が大阪湾をただよっていたニタリクジラを堺の埋立地に陸揚げして解体したのちに、自然史博物館に運んで骨格標本に仕上げたものです。縦3m、幅1.5m。




・林 靖彦氏(日本甲虫学会)によって収集された、多くのハネカクシ科のタイプ標本(新種を記載する際に用いた基準の標本)を含む日本産・海外産甲虫コレクション【写真8】


[8] ハネカクシ科を中心に研究された林靖彦氏の約7万点の甲虫コレクション
林 靖彦氏はハネカクシ科を中心とする甲虫の分類学的な研究に取り組んできたアマチュア研究者です。日本甲虫学会や当館の標本同定会などでも多くの貢献をされてきた氏のコレクションは、2024年(令和6年)に自然史博物館に寄贈されました。約7万点にのぼるコレクションには、貴重なハネカクシ科甲虫のタイプ標本(新種を記載する際に用いた基準の標本)を多く含んでいます。タイプ標本には赤いラベルがつけられており、その重要度を示しています。これまでの、そして今後のハネカクシ科の研究を支える一




・角野康郎氏(神戸大学名誉教授)によって収集された日本産の水草約30,000点のコレクションの一部
・佐藤隆春氏(当館外来研究員)によって収集された中新世火山岩類を中心とした岩石コレクション
4.標本を「守る」
 標本は適正な温度・湿度管理、保存処理、整理作業を行わないと、その標本が損なわれたり、利用できない状態になります。標本を守り、永劫的に活用していくためには、学芸員による日頃からの標本管理が必要です。標本を管理する収蔵庫とはどのような場所か、そして標本を利活用するためにどのような管理が行われているかを紹介します。

【主な展示】
・ジオラマ風に収蔵庫とはどのような場所かを紹介
・標本害虫などの収蔵庫の大敵【写真9】


[9] 昆虫や動物の標本を食べてしまうカツオブシムシの幼虫
収蔵庫では、標本を食べる虫や、カビが大きな問題になります。小さな虫や目に見えないカビでも、放っておくと標本はボロボロになってしまいます。こうした被害を防ぐために、博物館ではIPM(総合的有害生物管理)という考えに基づいて、温度や湿度を調整したり、こまめに掃除したりして、虫やカビが発生しにくい環境をととのえ、標本を守っています。



・標本の保存・保管方法
・標本管理の問題点
5.標本を「調べる」
 標本はただ収蔵庫に保管されるだけのものではなく、多くの人に利活用されることでその価値が高まります。収蔵庫に保管されている標本はどのように活用されるのか、標本を活用した様々な研究を紹介し、研究資料としての標本の意義を考えます。

【主な展示】
・分類学における標本の意味
・地域自然史研究と標本の意味【写真10】


[10] ヤチスギランのさく葉標本
標本は、その時、その場所で、その生き物が暮らしていたというゆるぎない証拠です。あとからでもきちんと同定ができる、という点で標本に勝るものはありません。写真は大阪府産ヤチスギランのさく葉標本。現在は大阪府下では見られません。大阪北部で採集されたこの古い標本が、確かに大阪にヤチスギランが生育していた証拠となっています。



・自然史博物館学芸員以外によって研究活用された標本
6.みんなに「見せる」
 学芸員の仕事でもっともわかりやすいのは展示の企画・作製です。博物館の展示はどのように作られるのか、そして展示を作る際に学芸員が注意している点などを紹介します。また、標本や展示のデジタル化についても紹介します。

【主な展示】
・展示用の標本と研究用の標本の違い【写真11・12】

[11] [12] アカウミガメの交連骨格標本とバラバラの標本
展示用に組み立てた骨格標本を交連骨格標本と呼びます。つなげた部分が見えなかったりするので、あまり研究に適しません。そこで研究用には、バラバラのまま箱詰めして保存します。写真はアカウミガメの交連骨格標本と、組み上げられていないバラバラの骨格標本です。





・レプリカや古生物の復元画
・学校への標本貸出キット
・視覚障害者に展示を理解してもらうための3Dプリンターによる触察用地形模型【写真13・14】

[13] [14] 触察用地形模型
展示品の多くが展示ケースに収められているため、博物館は視覚に障害のある人には利用しづらい施設です。実物や模型などの触ることができる展示品を増やす、展示を理解するための補助的な模型を作成するなどの合理的配慮が求められます。微細なもの、巨大なもの、遠くにあるもの、稀少なものなど、実物に触って形を理解することが難しい場合は、触察用の模型を作る必要があります。近年は安価で高性能な3Dプリンターが出回り、触察用の模型を自作することが可能になりました。写真は、地理院地図の3Dデータを元に作成した高知県室戸岬周辺の地形模型(13)、北海道の羊蹄山から洞爺湖、有珠山周辺の地形模型(14)です。






・デジタル化された標本・展示
7.博物館をとびだして
 自然史博物館の活動は、博物館での標本収集や展示だけにとどまるものだけではなく、野外での観察会や友の会活動、同好の人たちが集まるサークル活動など、その活動の輪はさらに広がっていきます。市民と共に進む自然史博物館の活動を紹介します。

【主な展示】
・博物館の普及教育活動
・自然史博物館友の会とサークル活動
・大和川水系の自然環境調査・プロジェクトYをはじめとした市民科学による地域自然誌の解明【写真15】


[15] 市民科学による地域自然誌の解明
科学研究で、特にそのデータの収集で市民の協力を得る手法を市民科学といいます。生き物の分布調査では市民科学が大きな力を発揮します。短期間で広い範囲の情報収集を実現できるとともに、調査に関する知識や意義を社会に広く普及できるという効果があります。写真は自然史博物館で現在行っている市民科学による大和川水系調査プロジェクトYによる魚班の調査風景。



8.学芸員が伝えたいこと
 標本の収集や保管、展示、普及教育を通じて学芸員が伝えたいものは何なのでしょうか。標本を未来に残す意味と博物館の存在意義を示し、この展示会のまとめとします。

III.同時開催

■ジュニア自由研究・標本ギャラリー
 小・中学生、高校生の自由研究の成果を紹介する「ジュニア自由研究・標本ギャラリー」を、自然史博物館ネイチャーホールにおいて特別展「学芸員のおしごと ー集める・調べる・伝えるー」と同時開催します。自然史博物館では、小・中学生、高校生の自由研究の方法や標本作りの個別相談に対応し、応援しています。その成果である小・中学生、高校生の作った生き物や岩石・化石の標本、および生物・地学分野の自由研究を募集し、展示します。応募した観察ノートやポスターなどの自由研究の成果や標本には、それぞれ学芸員からのコメントも添えて展示します。
※自由研究と標本の募集は、8月下旬頃を予定しています。

IV.関連イベント

■特別展講演会
 国内外の博物館で最先端の活動している研究者をお招きして、博物館活動を多面的に見る講演会を開催します。

「自然史研究に大きく役立つ博物館標本のDNA」


「世界の博物館で働くということ―イギリス・ザンビア・カリブ海の現場から」

■ギャラリートーク
 本特別展を担当した学芸員による展示解説を行います。

■ギャラリートーク・冬休み特別版
 本特別展を担当した学芸員による展示解説に加え、普段は見ることのできない学芸員の仕事場を少しだけご案内します。

■子どもワークショップ
 特別展で一番やさしい子ども向け行事。ハカセやスタッフといっしょに展示を楽しみましょう。
 ※日程等の詳細は決定次第、公式サイト等でお知らせします。

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