公益社団法人2025年日本国際博覧会協会(大阪市住之江区 事務総長:石毛博行)は、2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)を契機に、様々な「これからの日本のくらし(まち)」 を改めて考え、多彩なプレイヤーとの共創により新たなモノを万博で実現する「Co-Design Challenge」プログラム(以下、「CDC」)を2022年から展開しています。第1弾(CDC2023)では、社会課題の解決をめざすプロダクトの開発を実施。第2弾(CDC2024)では、その開発に加え、地域誘客を目的とした生産現場の公開やものづくり体験、オープンファクトリーにも取り組んでいます。
第3回目の開催となる「Co-Design Challenge Pitch #3―デザイン×ものづくりで日本の新しい価値を世界に広げる これからの日本のくらしをつくる22の挑戦 ―」が、7月29日(火)、万博会場内のフューチャーライフヴィレッジ(以下「FLV」)にて実施されました。本イベントでは、CDCに参加する事業者が、自社の課題解決に向けたアプローチや、プロダクトに込めた想い、そして未来へのビジョンを語りました。
ナビゲーターには、EXPO共創プログラムディレクター・齋藤精一氏と山出淳也氏を迎え、エースジャパン株式会社、テラサイクルジャパン合同会社、旭川家具工業協同組合、株式会社折兼、一般社団法人Design Week Kyoto 実行委員会の5事業者が登壇。それぞれが直面する社会課題や、それに応えるために開発したプロダクト、さらに万博終了後を見据えた展望について発表しました。
Co-Design Challenge Pitchは全5回の開催を予定しており、次回(第4回)は9月4日(木)に実施予定です。


ナビゲーターの齋藤氏が「中小企業やベンチャーなどに積極的に万博を活用してもらうための枠組みをずっと考えていました」と冒頭で切り出し、「デザイン視点で万博を最適化できるのか、その取り組みの一つがCDCです」と紹介。
山出氏は「今回の製品が今後、地域の中でどんな影響を与えていくかを期待したい。日本の多様性を伝えていく」と意気込み、それを受けて齋藤氏も「1社だけではなく、コミュニティとして同じ目的を持って取り組んでいきたい。CDCは完成形ではない、チャレンジです」と力を込め、登壇者の皆さんへとバトンをつなぎました。

最初に登壇したエースジャパン株式会社代表取締役の判藤慶太氏は、「このベンチを万博の会場内で見たことありますか」と問いかけました。スクリーンに映し出されたのは2人がけの木製ベンチ。「実は会場内のほぼすべてのエリアにあり、総数は2,000台です。会場に設置する際も1,000人以上が集まりました」と説明しました。
製品の原料は、森に放置された間伐材やダムの流木です。本来使い道がなく廃棄にも費用がかかりますが、判藤氏は未利用の間伐材を活かして環境問題への解決や森の整備などに取り組み、さらに「万博を通じて世界に発信したい」という想いに賛同する企業が結集しました。
また、部品はすべて1枚の板から構成され、材料収集から完成まで無駄がありません。枝、葉、皮まで全てを使い、木切れは北海道砂川市から鹿児島まで全国の多様な樹木や小中学生らが集めたものもあります。それらを粉砕してチップにし、金属の型に入れ、接着材を混ぜてプレス機で圧縮することで1枚の木板に仕上げます。
判藤氏は「万博を通じてたくさんの企業から問い合わせがあり、協力を得ながら事業を拡大していきたい」と、今後の活動に手応えを感じていました。

次に登壇したのは、テラサイクルジャパン合同会社ジェネラルマネージャーの浪花優子氏。P&Gジャパン、イオンとの3社協働プロジェクト「これからのごみ箱(資源回収箱)をデザインする」への思いと活動について語りました。テラサイクルはアメリカに本社を置き、約20か国で「捨てるという概念を捨てよう」をミッションに企業や消費者と連携し、使い捨てプラスチックの削減に取り組んでいます。
回収からプロダクトの完成までの流れは、まず全国で展開するイオングループ店舗に回収拠点を設けて、プラスチック容器を回収します。粉砕、板材に加工し、組み立ててごみ箱を製作するというものです。ごみ箱は万博会場のシンボルである大屋根リングの下に4セットが設置されており、「あえてジグザクに置くことによって箱の4面すべてが見えるように工夫し、循環のストーリーを分かりやすく伝えるために、イラストは何度も修正を重ねました」と説明する浪花氏。ごみ箱に付けられた2次元コードを読み取ると、ミャクミャクのフォトフレームが得られるという仕掛けもアピールしました。
浪花氏はこれまでの活動を振り返りながら、「“みんなで力を合わせよう”をコンセプトに取り組みました。そして、万博が新たなアクションを起こすきっかけになれば」と期待を込めました。

日本の5大家具産地の一つで、100年以上にわたり家具作りが続く北海道旭川市から、旭川家具工業協同組合理事長の藤田哲也氏が登壇しました。組合が運営する旭川デザインセンターを拠点とし、産業観光にも力を入れています。
藤田氏は旭川を「地域の豊かな森林環境とともに産業が育まれてきた」と紹介する一方で、林業や木工業が担い手不足や高齢化、需要の変化などの課題に直面していることにも触れ、「万博に参加することで森と木のデザインのつながりを可視化し、森林資源の持続可能な活用の重要性を広く伝えたい」と力を込めました。旭川家具のうち北海道産広葉樹で作られるのが10年前は3割弱だったのが、近年では8割近くにまで成長しています。
現在、万博会場に設置されているのは5脚の椅子で、「国際家具デザインコンペティション旭川(IFDA)」の入賞作を、地元産広葉樹を使い旭川家具の技術によって商品化したものです。藤田氏は「特徴があるものを選んだが、見たことがないようなデザイン」と話しました。
また、6月25~29日に開催された体験企画では、20か所のオープンファクトリーや木工体験ワークショップなどに多くの人が来場し、賑わいを見せました。

徳島県産の未利用木竹材を活用した「森林・地域を元気にするごみ箱」は、株式会社折兼がプロジェクトを始動させ6社連携で開発。ごみ箱は、森林率95%と古くから林業が盛んな徳島県那賀町で製作され、代表して株式会社那賀ウッド代表取締役の庄野洋平氏が登壇しました。
タケノコ農家の5代目でもあるという庄野氏は、生活には欠かせない木や竹が使われなくなり、竹林などが放置され、荒廃が進む山の現状を「自然環境は放っておくと荒れてしまうので、手入れが必要」と訴えます。実際に手入れを行った山で発生した木や竹の間伐材を高品質の木粉にして加工し、これを樹脂と合わせて成形加工しできたのが今回のごみ箱です。
庄野氏は「自然素材を成形する難しさにも苦労しました。自然素材だからこそのムラ感は多様性です。デザインも切り株を土台にペイントによる装飾を施し『ごみを捨てたくなくなるごみ箱』ができました」と開発過程について話します。
体験企画として夏には工場見学とサップ体験、秋にも森林見学ツアーを予定しています。庄野氏は「木が使われ山の手入れが進むと森林が元気になり、ものづくりや観光の振興で地域が活性化します。ぜひ那賀町へ」と締めくくりました。

最後に登壇したのは一般社団法人Design Week Kyoto 実行委員会代表理事の北林功氏で、「作り手と使い手が共創し、思い出が持続するスツール」について紹介しました。思い出とオリジナリティが詰まったスツール型の椅子で、木工部分には能登の震災から出た廃材を、座面には丹後ちりめんの残布に思い出を図柄に落とし込んだ刺繍を施したクッションを載せています。
「地元の京都府京丹後市、舞鶴市も町並みや暮らしがどんどん変わってきています」。そう話す北林氏は「地域の職人の技術と思いがあれば、資源の循環を超え、思い出や文化をつないでいける、そんなインテリアを目指した」と説明。クッションの図柄には地元の人から聞き取った風景を再現。「難しかったが、舞鶴で培ってきた刺繍技術の限界までチャレンジできた」と手応えを語ります。
アクセスの悪さもありながらCDCをきっかけに地域の知名度も上がってきたと言う北林氏。豊かな自然や食とものづくりを一体とした、滞在型研修を検討中です。
北林氏は「地域の魅力を再編集するきっかけになれば」と話し、「2,000年前から日本の玄関口だった京都北部へぜひお越しください」と呼びかけました。

「色々な地域で活躍している人が集まったので、他人を紹介する『他己紹介』の場として、これからの活動のきっかけに」と期待するのは山出氏。庄野氏は「つながることが出来て面白かった。色々なことができると実感しました」、浪花氏は「旅をしているような風景案内。舞鶴にはぜひ行ってみたい」と他の地域への訪問に触れました。
齋藤氏は「それぞれの製品に物語があり、ワクワクがあった。このコミュニティは万博という機会の活用や共創の重要性について共通理解を持っているので、困った時はパスを送り合えるようになってほしい」と力を込めました。

北林氏は「地域を超えた助け合いで、どのようにパスを出していけるか考えていきたい」と答え、庄野氏は「CDCのプロジェクトを通してたくましくなった。仕事につながる引き合いもあり、もっともっとこのチームで発展してきたい」と強調。藤田氏は「旭川という地域から万博に参加し、自分たちが作る木工やデザインを世界の方に見てもらえてよかった」と話し、浪花氏は「資源回収箱の会期終了後の活用方法について、いいアイデアがあればお寄せください」とさらなる共創を呼びかけました。判藤氏は「今回はスタートで、継続が大事。多くの人に環境問題を知ってもらいたい」と話しました。
最後に齋藤氏が「9月4日に開催予定の第4回以降もさらに多彩なプロジェクトをご紹介しますので、是非楽しみにして下さい」と締めくくり、第3回Co-Design Challenge Pitchは終了しました。
■ナビゲーター
齋藤精一 EXPO共創プログラムディレクター
Expo Outcome Design Committee(EODC)代表。2025年大阪・関西万博EXPO共創プログラムディレクター。パノラマティクス主宰。建築デザインをコロンビア大学建築学科(MSAAD)で学び、2000年からニューヨークで活動を開始。2006年(株)ライゾマティクス(現:(株)アブストラクトエンジン)を設立。社内アーキテクチャー部門『パノラマティクス』を率い、行政や企業などの企画、実装アドバイザーも数多く行う。2023年よりグッドデザイン賞審査委員長。
山出淳也
アーティスト/Yamaide Art Office株式会社 代表取締役/BEPPU PROJECTファウンダー。文化庁在外研修員としてパリに滞在(2002~04年)し、2005年にBEPPU PROJECTを設立。2022年3月、BEPPU PROJECTの代表を退任し、Yamaide Art Office株式会社を設立。
■事業者
エースジャパン株式会社(京都府相楽郡精華町)
これからの「未利用間伐材を活用したベンチ」
テラサイクルジャパン合同会社(神奈川県横浜市)
これからのごみ箱(資源回収箱)をデザインする
旭川家具工業協同組合(北海道旭川市)
WOOD&DESIGN ~「森と木とデザイン」を主軸に、「椅子」製作を通じた地域の課題解決~
株式会社折兼(愛知県名古屋市)
未利用木竹材を活用した森林・地域を元気にするごみ箱
一般社団法人Design Week Kyoto 実行委員会(京都府京都市)
作り手と使い手が共創し、思い出が持続するスツール
※登壇事業者の詳細は以下の別紙をご参照ください。
d154689-12-1e97b353ba20b1d1652f9c50d3b675fe.pdf
次回は9月4日(木)に開催いたします。ナビゲーターには、小西利行氏と倉本仁氏を招き、登壇事業者に株式会社colourloop、カナデビア株式会社、一般社団法人サスティナブルジェネレーション、株式会社ドッツアンドラインズを予定しております。是非、「Co-Design Challenge Pitch #4」にもお越し下さい。

■日時:2025年9月4日(木)開演:13時30分 終演:16時(予定)
■場所 :大阪・関西万博フューチャーライフヴィレッジTEステージ棟
■ナビゲーター:小西利行氏・倉本仁氏
小西利行
POOL INC. クリエイティブ・ディレクター/コピーライター。CM制作から、街づくりや国の戦略構築も行う。「伊右衛門」「PlayStation」「モノより思い出。」など
ヒットCM多数。多くの企業のCIなどブランディングも手掛ける。
倉本仁
JIN KURAMOTO STUDIO を主宰。家具、家電製品、アイウェアから自動車まで多彩なジャンルのデザイン開発に携わる。素材や材料を直に触りながら機能や構造の試行錯誤を繰り返す実践的な開発プロセスを重視。iF Design Award、Good Design賞、Red Dot Design Awardなど受賞多数。
■登壇事業者:株式会社colourloop、カナデビア株式会社、一般社団法人サスティナブルジェネレーション、株式会社ドッツアンドラインズ
■主催:公益社団法人2025年日本国際博覧会協会
■公式サイト:
https://www.expo2025.or.jp/co-creation-index/co-design-challenge/

※万博会場への入場には 大阪・関西万博のチケットが必要です。
大阪・関西万博 チケットインフォメーション | EXPO 2025 大阪・関西万博公式Webサイト
https://www.expo2025.or.jp/tickets-index/
本イベント自体への参加は無料です。(予約不要・入退場自由)
第5回 9月22日
ナビゲーター:齋藤精一氏、矢島進二氏 登壇事業者:調整中
ー 廃棄繊維を色で分けてアップサイクル ーサーキュラーエコノミーに繋がるこれからの“ベンチ”をデザインする
代表企業・団体:株式会社colourloop(京都市下京区)
協力企業・団体:株式会社アボード、ナカノ株式会社
世界的課題である廃棄繊維を、日本初の新しいリサイクルの形“Color Recycle System”でアップサイクル。魅力的なベンチに生まれ変わらせ、豊かで楽しい循環型社会のあり方を提示します。
紹介動画:
https://youtu.be/DC-zE7mWNrw
資源循環に貢献したくなるスマート回収箱とスマートフォンアプリ
代表企業・団体:カナデビア株式会社(大阪府大阪市)
協力企業・団体:大栄環境株式会社、株式会社大栄環境総研
資源循環することの重要性・必要性をスマートフォンアプリを通じて容易に認識できるようにします。
例えば、使用後の循環可能な資源を正しくスマート回収箱に
捨てることや万博会場内でのウェイストマネジメントとして、
会場内一部エリアで特定の資源の収集管理を実施しています。
来場者との環境意識共創として、スマートフォンを用いた
行動変容を促すことを目指します。
紹介動画:
https://youtu.be/BzKk8Wn9JG4
軽量・高強度で多彩なデザイン設計が可能な古紙から生まれる「展示台」
代表企業・団体:一般社団法人サスティナブルジェネレーション(奈良県北葛城郡広陵町)
協力企業・団体:株式会社アクラム、株式会社高木包装、株式会社パックインタカギ
軽量・高強度、古紙から生まれ変わったリサイクル素材の段ボールのみを使用した展示台を制作。また、工場見学や段ボール端材を使用して楽しめる創作体験など、サスティナブルな未来に向けての体験を実施します。
紹介動画:
https://youtu.be/rdiDrRnjVuU
これからの「椅子」をデザインする~一枚板から作る歩溜まり99%の椅子~
代表企業・団体:株式会社ドッツアンドラインズ(新潟県三条市)
協力企業・団体:熊倉シャーリング有限会社、東日本旅客鉄道株式会社
これからの「椅子」をデザインし燕三条広域で連携し製作した椅子を貸与します。「“捨てない” から“出さない” へ発想の転換」を行い、再利用するきっかけすら作らないことを目指します。また、製作した背景や、燕三条地域の文化を楽しく知っていただくため、「万博提供物品のミニチュアを作成する巡回体験ツアー」を実施します。
紹介動画:
https://youtu.be/BWmoErxvn2o?si=e0AsVtWTGG56n9-v
詳細は以下別紙をご確認ください。
d154689-12-6274ea237bc6539354cde2fda6465576.pdf

※現時点の予定であり、内容等について今後変更の可能性があります
※1:
https://www.expo2025travel.jp/top/detail/bokun/715881/
※2:
https://www.expo2025travel.jp/top/detail/bokun/732220/
※3:
https://www.expo2025travel.jp/top/detail/bokun/815909/

※フューチャーライフヴィレッジは、会場西側(フューチャーライフゾーン)に位置しています。